譲渡制限付株式報酬について。RSAとRSUの違いとその仕組み

譲渡制限付株式報酬について。RSAとRSUの違いとその仕組み

私たちの世界にはややこしい略語があふれていますが、3文字の略語には特に混乱するものがあります。

従業員株式報酬の世界で最も混乱を招く略語は、RSARSUです。

では、説明を始めます。

RSAとRSUは関連していますが、この2つは大きく異なります。

RSAとRSUの違いと仕組み

譲渡制限付株式購入権付与(RSA)は、公正な市場価格、ディスカウントで、あるいはコストなしで、株式を購入する権利を付与するものです。
譲渡制限付株式報酬(RSU)は、会社の株式に換算された金額を付与するもので、制限期間が経過するか、権利が確定するまで、実際に株式を受け取りません。その条件が満たされると、プランのルールに従って株式または現金を受け取ります。
この2つは、法務や税金の面でも違いがあります。

  • RSAは付与日に購入されるため、付与日から課税対象になります。RSUは購入されないので、期間が経過して株式が付与されるまで税金は繰延されます。
  • RSAは通常、時間ベースの付与オプションです。多くのRSUには、従業員が株式を無条件で所有できるまでに複数の付与条件があります。
  • 退職: 権利が確定していないRSAの株式は、退職時に買い戻しの対象になります。付与されていないRSUの株式は、直ちに無効になり、会社の所有に戻ります。
  •  RSAは83(b) electionの対象です。RSUは83(b) electionの対象ではなく、付与された時に課税されます。

最後に、RSAと異なり、RSUの株式リリースは後日まで繰り延べることができます。
つまり、付与された時に、従業員は雇用主が決定する法定最低税を支払わなければなりません。その他すべての税金の支払いは、(これも会社のプランルールによりますが)分配時/実際に株式あるいは相当額の現金を受け取る時まで繰り延べることができます(これは株式の受け取りも繰り延べていることになります)。

RSAs and RSUs have small differences that make a big impact

RSA vs RSU – 結論  

かつてはストックオプションが従業員に報奨を与える唯一の方法でしたが、近年では、株式報酬の形態として譲渡制限付株式報酬が出現し、人気が高まってきました。雇用主や設立者は、従業員による会社の株式保有と、職場のパフォーマンスの向上には関連があるという証拠を見て取ると、自社の報酬戦略を立案し、適応させたので、このトレンドは大手企業でもスタートアップ企業でも同じように顕著になりました。

ただし、この証拠を単に検討したのではなく、「それなら譲渡制限付株式報酬でやってみよう」ということになりました。もしそうだったなら、この記事はもっと短くなっていたことでしょう! そうではありませんでした。株式報酬戦略の定着や更新を望む企業にとって、譲渡制限付株式報酬を選択すると、1つの質問が解決する一方で、別の疑問が生じます。新たに生じて解決すべき質問の1つは、ストックオプションの代わりに、譲渡制限付株式購入権付与(RSA)を提供すべきか、あるいは譲渡制限付株式ユニット(RSU)を提供すべきかどうかということです。

この2つには似ている点もありますが、ある面では異なっているため、それらを入れ替え可能と見るのは間違いです。雇用主がこの2つの可能性を検討している場合、会社や従業員の環境に最適なのはどれかを決定する前に、2つの違いを明確にしておくことは絶対に必要です。

譲渡制限付株式報酬とストックオプションの違い

まず大事な点として、「譲渡制限付株式報酬とは?」という質問に回答し、そのタイプの株式が従来型のストックオプションとどのように違うのかを明らかにします。オプションとは、特定数の株式を設定された価格で購入する権利を与えるものですが、権利保有者はその権利を行使して、代わり金を支払うまで、株式を所有しません。譲渡制限付株式報酬の場合は、多くの場合、株式が発行された時点でその人の所有になります。ただし、これだけではありません。もしそれだけなら、譲渡制限付株式報酬は雇用者にはとってやる気が高まるツールとなりますが、従業員にとっては魅力的とは言い難いものになります。株式の譲渡が「制限されている」のは、RSAを選ぶかRSUを選ぶかによって、条件が付くからです。従業員は特定の期間が経過するか、特定の業績目標を達成するか、あるいは他の主要ビジネスイベントが実際に起こるまで株式を受け取らないか、株式を自由に売却できません。

オプションの場合は、市場価格が合意済みの行使価格を下回る場合、その株式は基本的に無価値になり、最終的に権利を主張されることもなく失効する可能性があります。また、ある時点でオプションを行使すると想定すると、市場価格が行使価格を大幅に下回る場合、株式を売却して利益を得るためには、その価値が回復するまで待たなければなりません。この2つのシナリオのいずれかが実現した場合、保有者は不運だということになりますが、この可能性は常にあります。

一方、譲渡制限付株式報酬の場合、状況は異なる傾向にあります。ストックオプションは無価値になる場合があるのに対し、RSAおよびRSUの場合はその可能性は低くなります。このタイプの株式の場合、直ちに、あるいは将来、コストを負担しないで、あるいはごく少額のコストで株式が発行されます。そのため、会社が破綻しない限り、付与された後は、その株式には何らかの価値が常にあると言えるでしょう。

RSAとは?

RSAとは、あなたに発行される実際の株式ですが、権利が確定するまで売却することはできません。権利確定は通常、時間条項および/またはIPOまたは会社の売却などの清算イベントにリンクしています。権利確定のスケジュールがあるため、受取人は事実上身動きできません。つまり、株式報酬は受け取るのですが、少なくとも時間ベースの権利確定条件が満たされるまで、保有し続けなければなりません。

また、オファーの性質によっては、付与日以降従業員は関連株式を「所有」していますが、それを購入しないと取引を完了できない場合があります。さらに具体的に言うと、この点に関しては、従業員が公正な市場価格(FMV)で、ディスカウントで、あるいはコストなしで、株式を購入する権利を与えられるという3つのシナリオが考えられます。

一般に、スタートアップ企業の場合は、初めて株式で資金を調達する前に、普通株式のFMVが非常に低い時に、初期の従業員がRSAを受け取ります。付与日に普通株式のFMVに連動するRSAを提供される場合、従業員にとっての魅力の1つは、会社が成功すれば、その価値は次第に増えていく、つまり、権利が確定した時、株価は購入価格を恐らくは大幅に上回ることです。総合すると、これは、スタートアップ企業の従業員に報奨を与える非常に効果的な方法になる可能性があります。

RSUとは?

RSAでは、従業員は最初に株式を受け取ることができるのに対し、RSUは将来のいつかの時点(付与日)に、通常、会社での在籍および/または特定の業績目標の達成に関連する特定の条件が満たされている限り、個人に株式を譲渡する約束です。

指摘しておきたいもう一つの重要な違いは、RSAの場合、受取人は株式の購入代金を支払うことになる場合があるのに対し、RSUの場合、それはありえません(税債務を除きます。これについては後述します)。従業員が最初にRSUに付けられた条件を満たす場合、会社はその株式をその従業員に配分するプロセスを完了し、最初の約束を実行します。

RSAはスタートアップ企業にとって論理的な選択となりえますが、大手企業の場合はRSUの方が理にかなっています。従業員から見たRSAの魅力の1つは、時間が経つうちにFMVが大幅に増加して、恩恵を受ける可能性があることです。この可能性は、スタートアップ企業の方が高いと予想されます。成功している大手企業の場合、株価は上昇する可能性がありますが、それ以上の上振れ余地には限界があり、事業環境によっては常に下落リスクがあります。その場合、従業員にとって、RSAはあまり強い誘因になりません。

権利確定と譲渡制限付株式報酬

権利確定とは、時間が経過して株式を獲得していくプロセスを指します。上記のように、RSAの権利確定とRSUの権利確定はそれぞれ異なる働きをします。

従業員は、RSA株式を付与された後に正式な所有者になるため、個人が自己都合または会社都合で会社を辞める時まで権利確定は影響しません。会社は、RSAを付与する時に、権利確定スケジュールを組み入れることによって、会社を守ろうとします。この条項では、雇用主は、退社する従業員の株式を買い戻す権利を自身に与えている場合があります。この条項の主な目的は、個人が入社し、RSAによる報酬を受け取り、すぐに退職して他社に移籍するというシナリオを防ぐことです。

>この点で、RSUは明らかに違います。RSUの場合、最初に株式を受け取るのではなく、将来のある時点で株式を付与することを最初に約束します。ここでは、様々な権利確定条件が満たされるまで、受取人に対して株式は正式に発行されません。前述の通り、通常の条件には、時間ベース、業績目標、さらには清算条件があり、清算の場合は、株式はIPOまたは、会社が別の企業によって買収される場合にのみ権利が確定します。権利確定条件が複数ある場合、すべての条件を満たさないと従業員は株式を取得できません。

従業員が退職する場合

権利が確定していない株式に関しては、従業員が退職する場合の重要なポイントは、RSAとRSUで異なります。RSAを保有している場合、その時点で100%の株式について権利が確定していますが、会社は権利が確定していない株式を、通常、受取人が支払った価格で買い戻す権利を持っています。会社は買い戻しオプションを行使する場合も、しない場合もありますが、ここで認識すべき重要なことは、会社が買い戻しの権利を持っていることです。

RSUを所有している従業員が退職する場合も、権利が確定している株式は保有できますが、権利が確定していない株式の状況はさらに少し複雑になります。複数の権利確定条件がついていることは珍しくないため、時間ベースの条件は満たしていても、例えば、会社がIPOを実施する、または買収されるという条件が満たされていないことがあります。会社によっては、他の条件が満たされていなくても、時間の経過によって権利が発生した株式の保有を認めることもあるのに対し、認めない会社もあるので、これについては一概には言えません。ただ、1つはっきりしているのは、退職時点で時間ベースで権利が確定していない株式は無効になるということです。

 

税務

ここでは普通の所得税とキャピタルゲイン税(CGT)という2つのタイプの税金が関連します。

RSAとRSUには、権利付与条件や退職の影響について違いがあったように、それぞれの税務シナリオにも明確な違いがあります。

RSA: 制限が何であれ、解除されて権利が確定した時点で所得税を支払う必要があります。その時点で、権利確定時のFMVと、付与された時点の1株当たりの株価(支払った場合)の差額に基づいて、税債務が計算されます。

そのため、付与された時に従業員が1株あたり2ドル支払っていて、権利確定時にその株式のFMVが10ドルであった場合、課税利益は8ドル(10ドル-2ドル)となります。その同じ従業員がその株式を売って利益を出す場合、その利益(権利確定時のFMVに対して)はキャピタルゲイン税の対象になります。つまり、先ほどの仮定で、この従業員が株式を15ドルで売却する場合、この取引で1株当たり5ドルの利益(15ドル‐10ドル)にキャピタルゲイン税が適用されます。

ここで、よくある落とし穴を見つけることはそれほど難しくありません。権利確定時に所得税の支払い義務が生じますが、この株式の価値はその後下落するかもしれず、さらには無価値になるかもしれません。その場合でも、権利確定時に支払い義務が生じた税金を支払わなければなりません。ただし、最悪のシナリオの場合、その背後に巨額の損失を抱えているかもしれません。RSAの支払うべき税金を支払うと、その後の株価動向がどうであろうと、返金されません。

朗報は、この問題を回避する方法(83(b) election)があることです。

この規定では、普通の所得税をすべて前払いすることを選択できます。一見すると、それは魅力的には見えないかもしれませんが、実際に大きな違いを生みます。これが機能するのは、83(b) electionが適用されると課税所得は通常ゼロになるからです。課税所得はどのような場合でも、従業員が権利を付与された時に株式に対して支払った金額と、その当時の株式のFMVの差額になります。つまり、従業員の課税所得は1株あたり2ドルとFMV2ドルの差、つまりゼロになります。

そこから、権利確定時のFMVが10ドル(ここの例)であっても、所得税の追加はありません。なぜなら、83(b)ではそれはすべて前払いで支払い済みだからです(実際に支払う金額がなかったとしても)。

ただし、CGTには影響があります。これまでの例で使用してきた数字を使うと、従業員が株式を15ドルで売却する場合、CGTの債務は、権利確定時のFMVと売却価格の差額に基づいて、計算されます(権利確定時のFMVとは逆に)。したがって、ここでは、CGTは1株あたり13ドル(15ドル-2ドル)と計算されます。

ただ、CGTの税率は普通の所得税よりかなり低くなるため、ここでもかなり有利になっています。最終的な支払い税額は、83(b) electionを適用しない場合に比べてはるかに少なくなります。また、売却できない流動性の低い株式に税金を支払う可能性も事前に排除しています。

RSUs: RSUに関する税制は、83(b) electionがない場合のRSAに似ています。

それでも1つ重要な違いがあります。RSAは最初に受取人に株式を付与するのに対し、RSUは将来、従業員が権利確定条件を満たした場合に会社が株式を付与するという約束であることを覚えていらっしゃいますか。その違いの実務的な影響は、権利確定時にRSU保有者が支払う義務がある税額が大きくなる余地があることです。

つまり、このシナリオでは、RSUが付与された時、従業員に税金の支払い義務は生じませんが、権利確定時にFMV全額について所得税の支払い義務が生じます。従って、権利確定時にFMVが10ドルであれば、税債務はその数字に基づいて計算されます。

ここで示した2つのシナリオには、83(b) election以外にも重要な違いがあります。RSAの受取人は権利確定時の税債務から、付与時に支払った価格を控除したものを手に入れるのに対し、RSU保有者は、権利確定時まで株式を所有しないため、そのような規定はまったくありません。

CGTは同じように処理されます。株式の売却によって確定された利益と、権利確定時のFMVとの差額に基づいて計算されます。

前述のように、RSUの権利確定には複数の条件がついていることが一般的です。何らかの清算イベントの要件が1つの条件となっていることがあります。税務の見地から見ると、これには特別債務が生じます。つまり、このシナリオでRSUの権利が確定した時に、従業員がその株式を売却することを決定した場合(時間に関する条件清算条件が満たされた場合)、権利確定時に所得税、利益に対してCGTを支払うのではなく、その時点の株式の価値全額に対して所得税を支払います。これまでの例で使用してきた数字を使うと、権利確定時のFMVは10ドル、従業員が15ドルで売却すると、所得税債務は15ドルと計算され、CGTは適用されません。

譲渡制限付株式報酬のまとめ – RSAs vs RSUs

RSAおよびRSUが異なる重要なポイントの抜粋:

  • 付与日にRSAは購入されるが、RSUは購入されない。
  • RSAには通常、時間ベースの権利付与条件がついている。それに対し、RSUには複数の条件が適用される傾向があり、受取人は通常、すべての条件を満たすまで株式を所有しない。
  • 従業員が退職する時、会社は権利が確定していないRSAを買い戻す権利を有するのに対し、時間ベースの権利確定条件を満たしていないRSUは無効になる。時間ベースの条件を満たしていて、その他の条件がまだ有効である場合は、会社側が裁量により、その株式を処理する。
  • RSAは83(b) electionsの対象で、納税金額を引き下げることができるが、RSUは対象外で、権利が確定した時に課税される。

それ以外に、以下の点に留意してください。

  • RSAは、どちらかと言えば初期段階で普通株式のFMVが低く、給与面では大手企業と競争することが困難な企業に人気がある。
  • RSUは大手企業に適している場合がある。企業に成功した実績がある場合、FMVが高くなります。そうすると、RSAに行使価格の引き上げが求められ、魅力の低下につながります。そのシナリオでは、RSUの方が理にかなっています。

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